古事記の中の桃
『古事記』では黄泉の国の条に登場する。伊邪那岐命が、亡き妻の伊邪那美命を連れ戻そうと、死者の国である黄泉の国に赴いた。
しかし失敗して予母都色許売(よもつしこめ)や8柱の雷神、黄泉軍(よもついくさ)に追われる。
地上との境にある黄泉比良坂(よもつひらさか)の麓まで逃げてきた時に、そこに生えていた桃の実を3個取って投げつけると、
雷神と黄泉軍は撤退していった。
この功績により桃の実は、伊邪那岐命から「意富加牟豆美命(おおかむづみのみこと)」の神名を授けられる。
そして、
「汝、我を助けしが如く 葦原中津国に有らゆるうつくしき青人草の、苦しき瀬に落ちて 患(うれ)へ悩むとき これを助くべし」
(お前が私を助けてくれたように、葦原の中津国(地上世界)のあらゆる生ある人々が、苦しみの激流に落ち、
悩み悲しみ苦しむことがあったときには、これを助けてやってくれ。)と命じられた。
桃太郎
お婆さんが川で洗濯をしていた時に流れてきた桃の中から誕生した桃太郎。
別の説では不老長寿の食べ物と言われる桃を食べ、お爺さんお婆さんが若返り授かったという説もあります。
そんなパワーを受けた桃太郎は鬼門にあたる鬼ヶ島で悪さをしている鬼を退治にいきます。
鬼退治に行くことになった際、家来になぜサル、鳥、犬だったのかは、ちょっと不思議なのですが、
それは陰陽五行説に深い関係があります。
天地万物のすべては「木・火・土・金・水」 に分けられていて、十二支や果実などもそれぞれにあてはめられています。
鬼が出入りする鬼門は火行に当たり、鬼門に対抗できる方位となる裏鬼門は反対側の金行となり、象徴果実は桃となります。
鬼門の鬼を退治するために裏鬼門から時計回りに回ると十二支の「さる」
「とり」「いぬ」と順番に会っていくことになります。
そして家来として連れて行き、鬼ヶ島で鬼を無事退治し宝を持って帰るという風水にも深い関係があるお話です。
西遊記と蟠桃(ばんとう)
蟠桃の原産地でもある中国では、古くから桃は邪気を祓い、長寿をもたらす特別な果実と信じられていました。
神仙が住まう天界には、食べた者を仙人にしたり、不老長寿や不老不死を与えたりする神秘の果実があるという伝説がありました。
この神秘の果実こそが蟠桃です。さらに高位の神仙たちが集い、美酒や蟠桃を飲食する宴会「蟠桃会(ばんとうえ)」が
開催されるという伝説もあります。
『西遊記』では孫悟空が管理を任された果樹園で、そのあまりのおいしさに西王母の誕生会に用意されたものを
すべて食べてしまったという話があるほどおいしいそうです。