kurabe:美味しさの原点

あるプロジェクトがあって、わたし、今年の3月に数回、kurabeで接客の修行をさせていただいたんです。

ランチを食べに来たお客さまの様子をうかがっていると
来店した時に笑顔。
お食事を提供した時にも笑顔。
食べ終わった時にも笑顔。

なんで、こんなにみんな笑顔なんだろう?って、わたしもお客さまとしてkurabeに行きました。
そこで、ガッツーンと衝撃を受けました。

美味しい!

野菜の一つひとつの美味しさが際立っていながら、パスタとソースと調和した世界を創りだしていました。

何故にこんなに美味しいんだ~???

ということで、渡邊さんの知る人ぞ知る修行の日々を探ってみました。

美味しINA-伊那谷のお取り寄せ

フィリップさんとの出会い

大学卒業後に故郷である伊那谷に戻ってきてた渡邊さん、フィリップさんというフランス人がオーナーのお店に縁があって、たまたまそこに入り、そこから一気に、料この世界へと傾いていきました。
フィリップさんことフィリップ・エネ氏は当時、フランス料理店を営むいっぽう、NISMOチームからパリ・ダカールラリーのナビゲーターとして出場するという一面も持っている料理人であり、そういった多面的な人柄も、渡邊さんには魅力的に映ったようです。

フランスでショックを受けるほどの美味しさを体験

渡邊さんがお店に入ってしばらく後、フィリップさんはフランス・ノルマンディーの実家へ帰り、そこでBIOレストラン「オーベルジュ・ペイザンヌ」を立ち上げることになりました。当然渡邊さんも同行することになり、足掛け2年を現地で過ごしました。渡邊さんは、フィリップさんの実家である「ラ・バーバリー」の食事や食材そのものの美味しさにショックを受け、たくさんの驚きと経験を積んだのです。

渡邊さん:「自分の料理人としてのキャリアを決定的に、大きく変えることになりました。フィリップさんの実家はラ・バーバリーといい、オーベルジュや農園などもある広大なところです。それまでも伊那で美味しいものをかなり食べていたはずなのですが、そのときに食べたものがかなり衝撃的でした。

オーベルジュ・ペイザンヌは“BIO”と呼ばれているように、オーガニック、有機野菜など法律の中でしっかりと定められた基準を満たしたショップでもあります。そこにはとにかくすごくいい食材があふれていました。

あるときニンジンが出てきたのですが、日本のニンジンからすると小さく痩せており、何だこれは、というものでした。それを調理しづらそうに切って鍋の中に入れて、バターと砂糖と塩ぐらいでちょっと煮込んで食べさせてもらった瞬間に、喉の中から手が出てきて(といってぎゅっとつかんで口の中に押し込みたくなるような、喉や口が喜んでいるという感触を初めて味わったのです。なぜ、ニンジンだけでこんなにショックなんだろうと。そこから、食べることや食材について考えなければいけないと思い始めました。」

渡邊さんは、「このような美味しいものがあって、美味しい調理方法があることをまざまざと見せつけられ、こんなに負けていていいのかな、こんなに先を行かれてしまっていいのかなと、日本のことを考えてしまいました。日本は世界の中の大国だと思っていたが意外とそうでもないぞと思い始め、日本人としてのアイデンティティを考えるきっかけになりました」とショックだったことを語りました。

“kurabe”創業

帰国後、渡邊さんは、伊那谷でみずから“kurabe”を立ち上げました。
その名の通り、店舗は“蔵”。土蔵、穀物蔵を改装したもので、そこをキッチンにしました。そのキッチン(食物を保管する蔵)からいろいろなものを生み出していくことになるのですが、最初は生パスタを作り、生み出していくということにとても価値があると信じながら始めました。

“kurabe”に込められた想い

渡邊さん:「農業としての重要な倉庫でもありながら、人間が生活をしていくうえで、そこに食材や農作物を備蓄していく蔵。日本人の生活の起点である蔵の中で調理をして、プロがプロらしい料理を出して行くということが、フランスで刺激を受けてきた人間のやり方なのだなと思い始めました。

また、kura“be”は“部”を指し、「太古に物部(もののべ)といわれるように“部”という漢字にはもの作りの専門集団という意味がありますので、自分がプロだと意識して料理人を務めていかなければいけないという想いを“部”にこめてkurabeという造語を作ったのです」

蔵の湿度は1年を通じて48%で、温度は変化するが湿度は一定に保つ機能が備わっています。
たとえば、蔵の中でいくら蒸気を出しても蔵が吸収し、逆に乾いてくると壁から湿気が出てくれます。これが素材に対して良い影響があることから、ここをベースに自分の料理人としてのカンをきちんと養わないといけないと思わせてくれる、蔵は、そういう場所だったのです。

伊那谷で…

多面的、かつグローバルな視点でモノを考える渡邊さん。東京などの大都会でお店を開くことは、まったく考えませんでした

渡邊さん:「フランスでも、パリではなくノルマンディーでした。そこから農作物の生産地に思いが至るようになったのです。ノルマンディーには上質な乳牛がいるから美味しいチーズがあって、りんごがあるからシードルがあって、そばがあるからガレットができて。りんごやカルヴァドス(アップルブランデー)を料理に使うとノルマンディー風と言います。○○の△△風とよくいいますが、そのほとんどが料理の形式や人名ではなく地方の名前です。その土地の特産品を組み合わせるとそう呼ばれるのですね。たとえばイタリアだとジェノバ風とか。そこに意識を向けると、ヨーロッパの食文化のシーンでそう呼ばれるものはみんな地方だったことに気付きました。そこは食材を作っている場所、栽培、飼育している場所であり、流通の集積地ではないのです。日本だとつい、ないがしろにしてしまいがちですが、ヨーロッパの食文化の中ではずっと○○風という名前をそこにつけて大事にしてきており、また世界中のグルメの人達は特にそこに注目しています

伊那谷には、りんごがあり、そばがあります。
伊那谷は、南北に広がる谷、その両側には日本の屋根と呼ばれる中央アルプスと南アルプスという山々、それを天竜川が切り開き、この谷が急峻な谷ではなくて、ある程度広い河岸段丘となっていることが大きな特徴になっています。「適度に広くて住む場所としても良い環境です。そして何よりも作物を作る場所として、様々な標高を選べるという特徴があるのです」

標高が選べて、日照時間のピークが場所によって変わることから、バリエーション豊かな作物ができるのが伊那谷の特徴なんですね。

渡邊さん:「料理人として大事にすることは、土地の特産品をきちんと美味しく、伊那谷“風”という料理として表現することです。この地形のよさをきちんと料理界に残していくことなのです。

生産者達と我々料理人たちでその未来像をしっかりと描きながら、伊那谷は伊那谷として循環ができるようなことをやっていかなければいけないと、そういう活動を少しずつ始めています。たとえば、平日にはスーパーマーケットに行くが、週末は農家などが新鮮なものを売りに来るマルシェに行くという、どちらもきちんと共存できる仕組みを作っていきます。それぞれの人たちがちゃんと生きていけるように考えながら、伊那谷からほかの地域に刺激を与えられるようになったらいいなと思っています」

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移住して5年。伊那谷の恵みを美味しくいただいてきた、と思っていましたが、こんなにも一つひとつの自然の恵みを食材に美味しく食べられるとは、思っていませんでした。
kurabe 渡邊さんとの出会いは、それほど衝撃的であり、きっと渡邊さんがフィリップさんの料理を食べた時と同じ感覚なんだろうと思います。
そして、伊那谷をなかなか訪れることのできない方々にもこの感動を体験していただきたい!
それが、わたしが美味しINA を始めたきっかけです。Chika記カテゴリーkurabe